スイートポテトで気をつけているポイントや練習方法についてざっくりと書いていきます。
(メモですので未整理、冗長な点はお許しください。順次追記していきます。)
◆奏法についてのメモ その1
(代表 小林達夫)
○タンギングについて(タンギングができる、できないという段階は卒業しているという前提です。)
日本人はドレミファ~というカタカナ音名に強く染まっているので、演奏中無意識に口がそれをトレースしてしまうことがあります。初心者の時はそれをタンギングの代理にしている人もいます。都合の良い(本当は悪いのですが)ことに音名中のド、レ、ラについてはタンギングとしても機能してしまうので、混然となっていることもあります。音名タンギングにならないこと。子音はともかく、母音の変化が「ドレミファソラシド」ならばo,e,i,a,o,a,i,oとなり、口が変化して不自然な音になります。
発音の子音はdとrのコンビネーションが基本です。tも明瞭さを求めるときに使っている(と思います)。母音は特に決めていませんがiやeが多いと思います。ポイントは次の3つです。
1)練習はイチチチチー
一般的にはtu-tu-tu-という練習をされる方が多いかと思いますが(それがdi-di-di-でも大した違いはありません)演奏ではフレーズの開始音以外は手前の音があってからの発音です。tu-tu-tu-は静止状態からの発音ですので、気をつけないと硬直したタンギングを覚えてしまいます。そこでお勧めは次の方法です。
イチチチチー イチチチチー イチチチチー イチチチチー 以下同文
これを音階に沿ってやります。最初の音はタンギングしていませんが2音目以降が美しいタンギングになるはずです。この美しい発音を覚えて、次は可能な限り最初の「イ」を短時間にしていきます。(イチチチチーのように)究極まで短時間にできれば「イ」は事実上聞こえなくなり、開始音から美しくなります。タンギングは舌と息の組み合わせ作業ですので、有効と思います。
2)「立て立て虎立て 千鳥と発つ鳥 虎虎立て立て」
なんのこっちゃ?と思った人は正常です。でもこれはタンギングが上手になる魔法の呪文です。1回を一息で、毎日10回づつ繰り返しているとみるみるタンギングが上手になります。「よう知らんけど」(変なフレーズが流行ってますね。でも気持ちがわからんでもないです。)ちなみに「はっつとり」ではなく「たつとり」でお願いします。頑張れタイガース。
3)運命はダダダダーン
ご存知の通り運命は「ダダダダーン」ですね。これを「ダラダダーン」や「ダダラダーン」という方は皆無でしょう。以下独善的な解説をします。音が進む時には次の3通りの進み方が考えられます。
①同じ音を繰り返す。 例:ミミ
②隣の音へ移る。例:ミレ
③一つ以上離れた音へ移る。例:ミド
あなたが少し大きな階段にいると考えてください。
①は同じ段上でジャンプする。 ②は上下どちらかの隣の段へ進む。 ③は一段以上飛ばして上下どちらかへ行く。①の時は弾む感じです。②は滑らかな動きです。③は多分弾んだ方が容易です。これら体の動きはそのまま音の動きと考えても良いでしょう。話題の運命は「ミミミドーッ」なので動き方は①①③となり「ダダダダーン」です。もしこれが「ミレミドーッ」なら「ダラダダーン」、「ミミレドーッ」なら「ダダラダーン」というわけです。(運命も少し先ではダダラダーンになりますね)
オカリナではこれらの違いを演じ分けることがとても大事です。西洋音楽は長い時間をかけて変化をしてきた中で、和音進行の力を味方にしたメロディーの進み方をその身にまとっています。旋法主体の日本の音楽などとは少し違うところです。私たちは音の進み方に応じた「動き方」を選択することで、より鮮やかに曲の形を描き出せるはずです。そしてそれを可能にするのがタンギングの技術で「立て立て虎立て 千鳥と発つ鳥 虎虎立て立て」 です。
だいぶ長くなりましたので、今回のところはここまでです。次回はブレスのことや実際ポテトで使っているエクササイズの楽譜を掲載できたらと思っています。また折に触れてご訪問ください。
◆奏法についてのメモ その2
(代表 小林達夫)
○ブレスは鼻で吸ってシュー
この欄では息づかいを「ブレス」と表現しています。(正確にはちょっと違うと思いますが)ブレスには「吸う」と「出す=吐く」の2つの作業がありますが、ポテトでは「鼻で吸ってシュー」で行なっています。以下は体験から導いたことが主ですので理論的にどうかは判断を読者に委ねます。
口から吸わないで鼻から吸うことのメリットは主に、緊張せずに吸えるということだろうと思います。多分人体にとっては鼻からの空気は自然で、口からの空気は異物ではないかと思います。口からの空気には異物誤嚥を防ぐシステムが働いて緊張をもたらすように思います。
「腹式呼吸」という言葉の謎(吸うと吐くとに関してお腹を膨らませるか凹ませるかの意見が正反対に存在します。凸から凹、凹から凸、凹と凹、凸と凸、今でも私には理解できていません)も鼻から吸うと解決するようです。呼吸の経路に残存する排気(肺でガス交換を終えた後の空気)量も口経由よりは少ないです。息が足りない現象は主に気体の量よりは脳の酸素不足が起こしていると考えています。難しい曲の方が早く息がなくなりますね。
曲を暗譜すると酸素消費が減るので、ブレスにも余裕が生じているはずです。たくさん吸うことよりも自然に吸うことが良いと思っています。
出す方は「シュー」です。通常吐く息は「フー」と表現しますが、これを「シュー」(無声音)にします。吐きながら息の出口(歯の噛み合わせと唇の隙間)を狭くしていくと途中から「シュー」に変わります。スプレー缶からエアが出るときみたいなもんです。「シュー」を使うと良いことがいくつもあります。
1)一息が長く続く。
2)音量が増える。
3)吹き込みに対しての抵抗が得られて、音が安定する。
息を出すときには実際にはタンギングもしますのでタンギング+シューで、ディシューとかヂュー(ディシューが縮まった)の感じになると思います。このシューは「その感じで」ではなく本当に無声音でやります。オカリナからはこの雑音は出ませんので安心してください。細い通路から息を吹き込むことにより息を減らして圧力の高い息が出せ、なおかつ息への抵抗も得られるので良いことばかりが多いです。フルートや他の管楽器を吹く方はそれぞれのアンブシュアの出口の大きさを考えてもらえば、いかにオカリナを「フー」で吹くのは出口が大きすぎて不自然か、がわかってもらえると思います。
(横道にそれて:元祖ドナーティの頃の多くの楽器は吹き込み口が今の楽器のように長方形ではなく、麦わらで抜いたかのような小さい丸型で、この時は「フー」のままでも楽器側が「シュー」の状態になっているようで快適な吹奏感です。あのウインドウェイを誰か再現しないかな?)
○ウォーミングアップ曲について
(下からダウンロードできます)
姿勢が大事ですので立奏で、必ずメトロノーム使用で、暗譜してしまうこと、が原則です。最初の4拍は鼻から吸います。次の4拍は止めます。できれば口を閉じないで、その次の12拍はシューで出します。できれば尻上がりにクレッシェンド。そして又鼻から吸うに戻ります。自然にできるようになるまで何度も繰り返してください。硬直せずに軽く揺れているのが良いです。ここまでは楽器なしでやります。
半音の上げ下げは指を使わずに息圧のみで行います。(たくさんの息を使うからといって口ブレスに戻らないように)オカリナの音程の調節はほとんどが息圧の分担ですので、これができないことには音程は合いません。最初はポルタメントでジワリと変化、途中からはスパッと変化(こちらが実演で応用できます)ノータンギングで、口に貯めた息に頼らずにやります。ポテトではこれをテナー(さくら工房の7C、アケタなら12C相当)でやります。
現実に半音幅の上げ下げはしませんが、能力としては十分な余裕が必要です。それから今更ですが、指がちゃんと閉じられていない状態ではこの練習も役に立ちませんので、とりあえずは音階を正しい姿勢で、正しく演奏できるようになってからのことですね。
音程はいくら頭でわかっていても気持ちだけでは合いません。実地に上げ下げできる技術が必要です。また、頭でわかるかどうかはオカリナの練習ではなくセンスの領域ですので、音程のことを意識して美しい演奏(アカペラ合唱や弦楽合奏が適しています)をたくさん聞いたり、演奏中常に音程のことを意識する、自分の録音をしっかり分析し改善する、習慣によって向上すると思います。オカリナは他の管楽器に比べて音色が尖っていないため、合奏した時に「音程が合っている時:合っていない時」の音色の差(うなり音)が出にくいです。
楽譜Fからはタンギングシラブルの練習です。表情付のために自在にdとrのタンギングを使い分けられるようにします。しばらくは楽器を使わずに口からの音声だけでやってください。ドゥドゥドゥドゥ〰という感じです。口で完璧にできるようになってから初めて楽器を使います。口練習を焦ると結局できないままで終わります。
また、次回に色々と書かせていただきます。
◆奏法についてのメモ その3
(代表 小林達夫)
○運指について
運指については色々な苦労がありますが、思うように指が動かないのには次の2つの要素があると思います。そして解決方法もそれぞれに合わせないといけません。
イ)作業員(指)への適切な指令が出せていない。
ロ)指令は出ているが現場の作業ができていない。
曲を覚えていなくて、次に私は何の音を演奏するか、その箇所へ来るまでわからないのは イ)ですね。これはシンコペーションなどのリズムが取れていない時にも起きます。また、臨時記号がややこしくて瞬時に運指が思いつかない時もこれに該当します。指の問題はこの イ)のほうが多いように感じます。
こちらはオカリナを使っての練習するのではなく、「曲を覚える」(楽譜を見ずに正しいテンポで、ドレミファ〜で歌えるようにする。音程のことはあまりこだわりません。)ことによって解決することが期待できます。「空」で歌えれば大抵吹けます。逆に言うと(音名で)歌えなければまず吹けません。また、吹きながら覚えようとしても作業が中断されて、はかどりません。
(シャープやフラットは、例えば「ファ♯」だとしても「ファ」と仮で歌っておくと良いですね)
ロ)のケースは比較的少ないかなとは思いますが、初心者の時や難曲の時はありがちですね。こちらの解決法は3つほど考えられます。
A) 指の運動会
B) 魔法の呪文
C) 半音まみれ(楽器が必要なのはここだけです)
まず解決法 A)
オカリナ演奏では指が1本づつ独立して動くことが大事です。特に難しいのが左の小指を閉じたまま薬指を開閉する作業です。これだけやっても良いんですが、イラッときますので、ついでに健康維持のためにも指の運動会をやりましょう。
親指を①とし、以下順に進んで、小指を⑤とします。机やテーブルに両手のひらを伏せて軽くかがめ、イッチ、ニー、サン、ヨン、ゴー、ロック、シッチ、ハッチと言いながら、下の要領で8回づつ上下に動かします。以下数字は両手の対応する指をさします。動かさない指は机についたままにすることがポイントです。焦らずにゆっくりと。(後で早口になるのでシーよりヨンの方がいいやすいです。)
▼1本パターン
①のみ、②のみ、③のみ、④のみ、⑤のみ
(例えばここならゴー、ニー、サン、ヨン、ゴー、ロック、シッチ、ハッチと唱えます)
▼2本パターン
親指編①②、①③、①④、①⑤ 人差し指編②③、②④、②⑤ 中指編③④、③⑤ 薬指編④⑤
(例えばここなら「ヨン、ニー、サン、ヨン、ゴー、ロック、シッチ、ハッチ」の前に「ヨンゴー」と急いで言います。)
▼3本パターン
親指編①②③、①②④、①②⑤、①③④、①③⑤、①④⑤ 人差し指編②③④、②③⑤、②④⑤ 中指編③④⑤
(例えばここなら「サン、ニー、サン、ヨン、ゴー、ロック、シッチ、ハッチ」の前に「サンヨンゴ」と急いで言います。)終了!!
この運動会でいろいろな指の動きの組み合わせを習得できますので、「指が動かない」はほぼ無くなります。(原理的には4本、5本パターン?もありますので、やりたい人はどうぞ。以下同文の作業内容です)
次に解決法 B)
運動会では全ての動きをやりましたが、実際には動き方はそこそこ限定されます。しかも曲の中では次の動きの指令が出せているかどうかで、動かせるかどうかが変わります。(この辺りはイ)とも大きく関わってきます)ここではよくある音の動きを記憶してしまい、動きを助ける力を習得します。
○大多数の曲の中では半分以上の音が両隣どちらかの音へ動きます。
○それ以外では一つ飛びの音への動きが多いです。
この2つで8割程度の音の動きに対応できます。記憶する呪文は3つだけです。
1)ドレミファソラシド ドシラソファミレド ドシラソファミレド ドレミファソラシド
2)ドミレファミソファラソシラドシレド ドラシソラファソミファレミドレシド
3)ミドファレソミラファシソドラレシド ドミシレラドソシファラミソレファド
高速で暗唱できるようになりましょう。オカリナで吹けなくても十分に効果はあります。
駄目押しに解決法 C)
これは楽譜をつけます。有名なアイルランドの歌「サリー・ガーデン」をいろいろな調子で練習します。暗譜すると上手になれます。どの調子であっても指の都合に左右されず、同じように心を込めて歌えるようになることが目的です。聞いている人に転調したことがわからないほど自然になれば合格です。繰り返して2のところで終わりです。
以上「運指について」はここまでです。
これらの記事の著作権はスイートポテトオカリナ合奏団および小林達夫が保有します。 引用についての制限は特にありませんが、その際は必ず出典:オカリナよもやま話(スイートポテトオカリナ合奏団)と明示なさってください。楽譜類の転載および商用利用については制限させていただきます。 |