よもやま話

 スイートポテトで気をつけているポイントや練習方法についてざっくりと書いていきます。

(メモですので未整理、冗長な点はお許しください。順次追記していきます。)


奏法についてのメモ その1

(代表  小林達夫)

 

○タンギングについて(タンギングができる、できないという段階は卒業しているという前提です。)

 日本人はドレミファ~というカタカナ音名に強く染まっているので、演奏中無意識に口がそれをトレースしてしまうことがあります。初心者の時はそれをタンギングの代理にしている人もいます。都合の良い(本当は悪いのですが)ことに音名中のド、レ、ラについてはタンギングとしても機能してしまうので、混然となっていることもあります。音名タンギングにならないこと。子音はともかく、母音の変化が「ドレミファソラシド」ならばo,e,i,a,o,a,i,oとなり、口が変化して不自然な音になります。

 発音の子音はdとrのコンビネーションが基本です。tも明瞭さを求めるときに使っている(と思います)。母音は特に決めていませんがiやeが多いと思います。ポイントは次の3つです。

 

1)練習はイチチチチー

 一般的にはtu-tu-tu-という練習をされる方が多いかと思いますが(それがdi-di-di-でも大した違いはありません)演奏ではフレーズの開始音以外は手前の音があってからの発音です。tu-tu-tu-は静止状態からの発音ですので、気をつけないと硬直したタンギングを覚えてしまいます。そこでお勧めは次の方法です。

 イチチチチー イチチチチー イチチチチー イチチチチー 以下同文

 これを音階に沿ってやります。最初の音はタンギングしていませんが2音目以降が美しいタンギングになるはずです。この美しい発音を覚えて、次は可能な限り最初の「イ」を短時間にしていきます。(チチチチーのように)究極まで短時間にできれば「イ」は事実上聞こえなくなり、開始音から美しくなります。タンギングは舌と息の組み合わせ作業ですので、有効と思います。

 

2)「立て立て虎立て 千鳥と発つ鳥 虎虎立て立て」

 なんのこっちゃ?と思った人は正常です。でもこれはタンギングが上手になる魔法の呪文です。1回を一息で、毎日10回づつ繰り返しているとみるみるタンギングが上手になります。「よう知らんけど」(変なフレーズが流行ってますね。でも気持ちがわからんでもないです。)ちなみに「はっつとり」ではなく「たつとり」でお願いします。頑張れタイガース。

 

3)運命はダダダダーン

 ご存知の通り運命は「ダダダダーン」ですね。これを「ダラダダーン」や「ダダラダーン」という方は皆無でしょう。以下独善的な解説をします。音が進む時には次の3通りの進み方が考えられます。

 

①同じ音を繰り返す。 例:ミミ 

②隣の音へ移る。例:ミレ 

③一つ以上離れた音へ移る。例:ミド 

 

あなたが少し大きな階段にいると考えてください。

①は同じ段上でジャンプする。 ②は上下どちらかの隣の段へ進む。 ③は一段以上飛ばして上下どちらかへ行く。①の時は弾む感じです。②は滑らかな動きです。③は多分弾んだ方が容易です。これら体の動きはそのまま音の動きと考えても良いでしょう。話題の運命は「ミミミドーッ」なので動き方は①①③となり「ダダダダーン」です。もしこれが「ミレミドーッ」なら「ダラダダーン」、「ミミレドーッ」なら「ダダラダーン」というわけです。(運命も少し先ではダダラダーンになりますね)

 

 オカリナではこれらの違いを演じ分けることがとても大事です。西洋音楽は長い時間をかけて変化をしてきた中で、和音進行の力を味方にしたメロディーの進み方をその身にまとっています。旋法主体の日本の音楽などとは少し違うところです。私たちは音の進み方に応じた「動き方」を選択することで、より鮮やかに曲の形を描き出せるはずです。そしてそれを可能にするのがタンギングの技術で「立て立て虎立て 千鳥と発つ鳥 虎虎立て立て」 です。

 

 だいぶ長くなりましたので、今回のところはここまでです。次回はブレスのことや実際ポテトで使っているエクササイズの楽譜を掲載できたらと思っています。また折に触れてご訪問ください。

 

 

 


奏法についてのメモ その2

(代表  小林達夫)

 

○ブレスは鼻で吸ってシュー

 この欄では息づかいを「ブレス」と表現しています。(正確にはちょっと違うと思いますが)ブレスには「吸う」と「出す=吐く」の2つの作業がありますが、ポテトでは「鼻で吸ってシュー」で行なっています。以下は体験から導いたことが主ですので理論的にどうかは判断を読者に委ねます。

 口から吸わないで鼻から吸うことのメリットは主に、緊張せずに吸えるということだろうと思います。多分人体にとっては鼻からの空気は自然で、口からの空気は異物ではないかと思います。口からの空気には異物誤嚥を防ぐシステムが働いて緊張をもたらすように思います。

 「腹式呼吸」という言葉の謎(吸うと吐くとに関してお腹を膨らませるか凹ませるかの意見が正反対に存在します。凸から凹、凹から凸、凹と凹、凸と凸、今でも私には理解できていません)も鼻から吸うと解決するようです。呼吸の経路に残存する排気(肺でガス交換を終えた後の空気)量も口経由よりは少ないです。息が足りない現象は主に気体の量よりは脳の酸素不足が起こしていると考えています。難しい曲の方が早く息がなくなりますね。

曲を暗譜すると酸素消費が減るので、ブレスにも余裕が生じているはずです。たくさん吸うことよりも自然に吸うことが良いと思っています。

 

 出す方は「シュー」です。通常吐く息は「フー」と表現しますが、これを「シュー」(無声音)にします。吐きながら息の出口(歯の噛み合わせと唇の隙間)を狭くしていくと途中から「シュー」に変わります。スプレー缶からエアが出るときみたいなもんです。「シュー」を使うと良いことがいくつもあります。

1)一息が長く続く。

2)音量が増える。

3)吹き込みに対しての抵抗が得られて、音が安定する。

 息を出すときには実際にはタンギングもしますのでタンギング+シューで、ディシューとかヂュー(ディシューが縮まった)の感じになると思います。このシューは「その感じで」ではなく本当に無声音でやります。オカリナからはこの雑音は出ませんので安心してください。細い通路から息を吹き込むことにより息を減らして圧力の高い息が出せ、なおかつ息への抵抗も得られるので良いことばかりが多いです。フルートや他の管楽器を吹く方はそれぞれのアンブシュアの出口の大きさを考えてもらえば、いかにオカリナを「フー」で吹くのは出口が大きすぎて不自然か、がわかってもらえると思います。

 (横道にそれて:元祖ドナーティの頃の多くの楽器は吹き込み口が今の楽器のように長方形ではなく、麦わらで抜いたかのような小さい丸型で、この時は「フー」のままでも楽器側が「シュー」の状態になっているようで快適な吹奏感です。あのウインドウェイを誰か再現しないかな?)

 

○ウォーミングアップ曲について

(下からダウンロードできます)

 姿勢が大事ですので立奏で、必ずメトロノーム使用で、暗譜してしまうこと、が原則です。最初の4拍は鼻から吸います。次の4拍は止めます。できれば口を閉じないで、その次の12拍はシューで出します。できれば尻上がりにクレッシェンド。そして又鼻から吸うに戻ります。自然にできるようになるまで何度も繰り返してください。硬直せずに軽く揺れているのが良いです。ここまでは楽器なしでやります。

 

 半音の上げ下げは指を使わずに息圧のみで行います。(たくさんの息を使うからといって口ブレスに戻らないように)オカリナの音程の調節はほとんどが息圧の分担ですので、これができないことには音程は合いません。最初はポルタメントでジワリと変化、途中からはスパッと変化(こちらが実演で応用できます)ノータンギングで、口に貯めた息に頼らずにやります。ポテトではこれをテナー(さくら工房の7C、アケタなら12C相当)でやります。

 現実に半音幅の上げ下げはしませんが、能力としては十分な余裕が必要です。それから今更ですが、指がちゃんと閉じられていない状態ではこの練習も役に立ちませんので、とりあえずは音階を正しい姿勢で、正しく演奏できるようになってからのことですね。

 

 音程はいくら頭でわかっていても気持ちだけでは合いません。実地に上げ下げできる技術が必要です。また、頭でわかるかどうかはオカリナの練習ではなくセンスの領域ですので、音程のことを意識して美しい演奏(アカペラ合唱や弦楽合奏が適しています)をたくさん聞いたり、演奏中常に音程のことを意識する、自分の録音をしっかり分析し改善する、習慣によって向上すると思います。オカリナは他の管楽器に比べて音色が尖っていないため、合奏した時に「音程が合っている時:合っていない時」の音色の差(うなり音)が出にくいです。

 

 楽譜Fからはタンギングシラブルの練習です。表情付のために自在にdとrのタンギングを使い分けられるようにします。しばらくは楽器を使わずに口からの音声だけでやってください。ドゥドゥドゥドゥ〰という感じです。口で完璧にできるようになってから初めて楽器を使います。口練習を焦ると結局できないままで終わります。

 

また、次回に色々と書かせていただきます。

 

 

ダウンロード
ウォーミングアップ曲
warmupex2022.pdf
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奏法についてのメモ その3

(代表  小林達夫)

 

○運指について

 運指については色々な苦労がありますが、思うように指が動かないのには次の2つの要素があると思います。そして解決方法もそれぞれに合わせないといけません。

 

イ)作業員(指)への適切な指令が出せていない。

ロ)指令は出ているが現場の作業ができていない。

 

 曲を覚えていなくて、次に私は何の音を演奏するか、その箇所へ来るまでわからないのは イ)ですね。これはシンコペーションなどのリズムが取れていない時にも起きます。また、臨時記号がややこしくて瞬時に運指が思いつかない時もこれに該当します。指の問題はこの イ)のほうが多いように感じます。

 こちらはオカリナを使っての練習するのではなく、「曲を覚える」(楽譜を見ずに正しいテンポで、ドレミファ〜で歌えるようにする。音程のことはあまりこだわりません。)ことによって解決することが期待できます。「空」で歌えれば大抵吹けます。逆に言うと(音名で)歌えなければまず吹けません。また、吹きながら覚えようとしても作業が中断されて、はかどりません。

(シャープやフラットは、例えば「ファ♯」だとしても「ファ」と仮で歌っておくと良いですね)

 

 ロ)のケースは比較的少ないかなとは思いますが、初心者の時や難曲の時はありがちですね。こちらの解決法は3つほど考えられます。

 

A) 指の運動会

B) 魔法の呪文

C) 半音まみれ(楽器が必要なのはここだけです)

 

まず解決法 A)

 オカリナ演奏では指が1本づつ独立して動くことが大事です。特に難しいのが左の小指を閉じたまま薬指を開閉する作業です。これだけやっても良いんですが、イラッときますので、ついでに健康維持のためにも指の運動会をやりましょう。

 親指を①とし、以下順に進んで、小指を⑤とします。机やテーブルに両手のひらを伏せて軽くかがめ、イッチ、ニー、サン、ヨン、ゴー、ロック、シッチ、ハッチと言いながら、下の要領で8回づつ上下に動かします。以下数字は両手の対応する指をさします。動かさない指は机についたままにすることがポイントです。焦らずにゆっくりと。(後で早口になるのでシーよりヨンの方がいいやすいです。)

 

▼1本パターン 

①のみ、②のみ、③のみ、④のみ、⑤のみ

(例えばここならゴー、ニー、サン、ヨン、ゴー、ロック、シッチ、ハッチと唱えます)

 

▼2本パターン

親指編①②、①③、①④、①⑤ 人差し指編②③、②④、②⑤ 中指編③④、③⑤ 薬指編④⑤

(例えばここなら「ヨン、ニー、サン、ヨン、ゴー、ロック、シッチ、ハッチ」の前に「ヨンゴー」と急いで言います。)

 

▼3本パターン 

親指編①②③、①②④、①②⑤、①③④、①③⑤、①④⑤ 人差し指編②③④、②③⑤、②④⑤   中指編③④⑤  

(例えばここなら「サン、ニー、サン、ヨン、ゴー、ロック、シッチ、ハッチ」の前に「サンヨンゴ」と急いで言います。)終了!!

 

 この運動会でいろいろな指の動きの組み合わせを習得できますので、「指が動かない」はほぼ無くなります。(原理的には4本、5本パターン?もありますので、やりたい人はどうぞ。以下同文の作業内容です)

 

次に解決法 B)

 運動会では全ての動きをやりましたが、実際には動き方はそこそこ限定されます。しかも曲の中では次の動きの指令が出せているかどうかで、動かせるかどうかが変わります。(この辺りはイ)とも大きく関わってきます)ここではよくある音の動きを記憶してしまい、動きを助ける力を習得します。

 

○大多数の曲の中では半分以上の音が両隣どちらかの音へ動きます。

○それ以外では一つ飛びの音への動きが多いです。

 

この2つで8割程度の音の動きに対応できます。記憶する呪文は3つだけです。

 

1)ドレミファソラシド ドシラソファミレド ドシラソファミレド ドレミファソラシド

2)ドミレファミソファラソシラドシレド ドラシソラファソミファレミドレシド

3)ミドファレソミラファシソドラレシド ドミシレラドソシファラミソレファド

 

 高速で暗唱できるようになりましょう。オカリナで吹けなくても十分に効果はあります。

 

駄目押しに解決法 C)

 これは楽譜をつけます。有名なアイルランドの歌「サリー・ガーデン」をいろいろな調子で練習します。暗譜すると上手になれます。どの調子であっても指の都合に左右されず、同じように心を込めて歌えるようになることが目的です。聞いている人に転調したことがわからないほど自然になれば合格です。繰り返して2のところで終わりです。

 

以上「運指について」はここまでです。

 

 

ダウンロード
サリー・ガーデン
sallygardensEX2.pdf
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オカリナ奏法についてのメモ その4

(代表  小林達夫)

 

○音程について(ただいま工事中)

 

 

 


名前についての考察

 ○オカリナの名前について

 オカリナというか、オカリーナ というかについては趣味の違いでその示すものについては違いがないと思いますが、種類の名前となると話が大いに違ってきます。「ソプラノ」や「アルト」が何を示すのかについては現在メーカーごとにだいぶ食い違いがあり、私たちが楽譜「オカリナ四重奏のための春夏秋冬」や「地球は笑顔」を出版した時にも楽器名のことで購入された方や販売店での誤解がいくつかあったように聞いています。

 全てについて説明をすることは大変ですので、とりあえずよくある食い違いについてここで考察をしようと思います。

 

アルトCとバスC という名前について

 これらはよく聞く名前ですが、ポテトではこれらの名前は使いません。理由は以下です。

○フルートやサックス、クラリネット、リコーダーなどと違ってオカリナにはメーカーの違いを超えて共通の統一された名前がない。

○都合の悪いことにオカリナには上記の各管楽器よりも多くの(調の違う)種類が存在する。 共通の名前がないことに加えて、種類が多いのですから混乱の度合いが高いことは十分に予想されますね。

 

 オカリナが辿ってきた歴史のこともありますが、「音域が狭い」ということから「とりあえずはこれ一本」みたいな標準たりうる種類がないことも大きな原因かなと思います。例えば「フルート」はほぼ1種類、サックスはアルトとテナーの2種類、クラリネットも1種類、トランペットやトロンボーンも1種類、リコーダーはソプラノとアルトの2種類、などと主に使用する楽器が限られています。それらを軸に上下の種類の名前が決まりますので、混乱が起きにくいです。オカリナの場合は吹奏楽やオーケストラのような「指定席」がないことに加えて、オカリナ発祥の頃、製作時のピッチ管理が難しかったことも影響したと思いますが、様々な調子の楽器が生まれています。また、無伴奏で吹くときにはそれら調子の違いは、音色の「テイスト」の違いとして重宝されてきたことも考えられます。オカリナの種類には「正統な名前」というのは存在しないと思います。

 それならば実用的なしかも統一見解となる名前に落ち着いてくれたらよかったのですが、残念ながらそうはなりませんでした。そこで、私たちは自分たちの団内で誤解がないように統一の名前を定めて今もそれを使っています。参考にしたのは親戚関係で名前が整備されている「リコーダー」です。演奏法にも共通点が多くまた、ソプラノやアルトリコーダーについては体験した人も相当数いるのではと思われますので、音の高さの指標としても良いと思います。小学校で習うソプラノリコーダーと「同じ高さ」で全部塞いだら「ド」のオカリナは当然「ソプラノ」としました。それを軸に上下を決めています。

 

 さて、やっと「アルトCとバスC」の話題です。上記の「ソプラノ」は実は「アルトC」として数多く販売され使用されています。この記事の読者の中にも使っておられる方もたくさんおられるのではないかと思いますが、それは「ソプラノリコーダー」と同じ高さで、ということはピッコロと同じ高さであるということです。楽譜には本来「実際の音はオクターブ高い」ことを示す「8」がト音記号についていないといけないのですが(表内をご覧ください)慣習的に省かれることも多いです。それに気づかずにいると本当に「アルト」と思ってしまいがちです。

 ソプラノ、アルト、テナー、バスという音域の区分はご存知と思います。もしこの「アルト」を認めるとその下が順にテナー、バスということになるのですが、その時「バス」にはちょっと不都合が生じます。それはその「バス」はフルートと同じ音の高さの楽器で低い方の基準音はト音記号の低い「ド」です。確かにフルート系の楽器(オカリナも含むで良いと思います)は高次倍音が少ないので音色として「あたかもオクターブ低いかのように聞こえる」現象があるとは大昔から記述されていますが、だからと言って実際にオクターブ低いわけではありません。(流石に今はないと考えたいですが、昔は運指表の音部記号が間違っているメーカーもありました。)さすがにこの「バス」名には辛いものがありますね。

 

 加えて別の違和感もあります。それは多くの木管、金管楽器でソプラノやテナーが「C」の楽器でアルトは「F」の楽器に落ち着いたものが多いということです。(もちろん例外もあります)わざわざ逆らわなくても良いのではと思います。

 

とりあえず今流通している楽器名が一挙に変わるとは思えませんが、(それは明日からケチャップとマヨネーズの名前を交換します、みたいなものでしょうから)ご自分の楽器の音域について理解なさることを、そしてお願いしますが、ポテトのソプラノ・テナーは「C」でアルト・バスが「F」だということをご理解ください。

 

 

 ○楽器の名前一覧表

○ F 管オカリナの移調記譜について

(以下の記事に登場するソプラノやアルトなどの楽器名は「ポテト方式の名前」です。市販楽器の名前とは違うこともありますので、前記事をご覧になってからお読みいただくようにご注意ください。)

 

 F 管については現在は移調記譜が大半を占めているようですが、私たちは実音記譜で演奏しています。そして私たちの考えでは合奏するならそれ(実音記譜)以外ではあり得ないと考えています。以下にそれぞれの長所、短所を考えようと思います。

 

実音記譜(オクターブの移動は許容します)

○長所 楽譜に書かれた音と実際に出てくる音が一致する。

○短所 例えば楽譜上の「ド」を演奏するときに、C 管とF 管では運指が異なる。

 F 管用の運指を新たに覚えないといけない。

 

移調記譜はこれの逆転で

○短所 楽譜に書かれた音と実際に出てくる音が一致しない。

○長所 例えば楽譜上の「ド」を演奏するときに、C 管とF 管とも運指が同じ。

 F 管用の運指を新たに覚えることはない。(ここが最大のポイントか?)

 

もう少し移調記譜のことを説明します。

 「ド」を演奏するとき、ソプラノC では両手の10 指とも(小音孔以外)全部を塞ぎます。

同じ高さの音(当然「ド」ですが)をアルトF で演奏するときは左手を全部塞ぎ、右手は全部開放します。これはソプラノC では「ソ」を演奏するときの運指になります。なぜそうなるかといえば、アルトF の方がソプラノC に比べて楽器が大きく全体の音が低いからです。

 アルトF は始まりの音が「ファ」で(ファ=F、だからF 管ということなのですが)「ド」はファ・ソ・ラ・シ♭・ドで下から5番目の音になります。もしもこれがG 管ならG= ソですので、下から4つ目の音ということになります。

 ここで勘の良い方は思いつかれたかもしれませんが、そうですアルトF で「ド」を演奏するにはソプラノC で「ソ」を演奏するときの運指をすれば良いという考え方が生まれます。

例えば楽譜には「ドレミファソ」と書いておき、それをアルトF で演奏すれば実際には「ファソラシ♭ド」が出てくる。それが移調記譜です。なんと便利な魔法でしょう。!??

 ところが、困ったことがあります。それは

 

1)アルトF のためにはそれ用の楽譜(移調譜)をあらかじめ用意しないといけない。

2)例えば2重奏で上がソプラノC、下がアルトF の時は、上下パートで楽譜の調子が異なるだけではなく見た目にも不自然な楽譜となります。以下は譜例です。

 

 

 おなじみの「蝶々」ですが、パッと見は上下同じように見えるかもしれません。でもよく見ると下の楽譜はアルトパートだけにシャープがついています。そうです、こちらが移調記譜です。譜例1を見ると「S,A で3度のハーモニーなんだなあ、3小節目の頭は同じ音になっているなあ」という発見ができると思います。これが譜例の2では(移調記譜に精通した方を除いては)そのような発見は難しいと思います。直感的(見たままの印象)には4小節目

などは「A の方が3度高いハモり」に見えるのではないでしょうか?(もちろん上パートのオクターブ下げ記譜のこともありますが)

 移調記譜に精通する努力は、私には新築待ちの仮住まいにオーダー家具を入れるようなことに思えてなりません。

 

私は自分のパートしか見ないので関係ない

 とおっしゃる方もおられるかとは思います。専用の楽譜も出版社が用意してくれています。でもだからこそ私は強調したいのですが「合奏」を思う存分に楽しみたければ、「総譜」を読んで曲の構造を理解することは不可欠です。(歴史上では総譜の使用は比較的後代になります。)この辺りはややこしくなりますのですっ飛ばしますが、練習中でも「譜例2」では「3小節目の最初の音はS が「ド」でA も「ソ」だから同じ音ですね。」という意味不明の会話になりかねません。クラリネットやサックスに馴染んだ方から見ると移調記譜はごく当たり前のことかもしれませんが、それらは主に同属のアンサンブルよりはソロ系の楽器として発展し、しかも音域が広く実音記譜では五線の上下へのはみ出しが多すぎて、読みにくいからと考えます。

 

合奏のハモリを習得するには「実音記譜」で

 楽器メーカーや出版社などは「アルトの運指を覚え直すのはなあ‥」という方に敬遠されたくないので今後も「移調記譜」からはなかなか離れられないかと思います。しかしオカリナを独奏だけではなく合奏でも楽しみたい(サプライヤ目線では市場を発展させたい)と思うならば、入口は「移調記譜」であったとしても「実音記譜」への移行は不可欠だろうと思います。親戚のような関係の「リコーダー」の世界はF 管のアルトリコーダーが主楽器であった経緯も手伝って早くから「実音記譜」になっています。そしてアンサンブルの形で楽しんでおられる方たちが大勢おられます。オカリナの世界もぜひ実音記譜が当たり前になっていってほしいと思います。

 

アルトの運指を全く新しく覚えるのでもありません。

 指の動きはC 管もF 管も変わりなく同じです。C 管で覚えた運指法はそのままF 管に使えます。ただし、同じ運指でも「出る音」が異なるということです。経験的には最初敬遠された方も実際にやってみると比較的に短期間(数ヶ月)で馴染まれるようです。そのあと得るものの大きさを考えると価値あるチャレンジと思います。

 

C 管運指からF 管運指への移行には

1)アルトの「ド」を徹底して覚えると良いと思います。口で「ドレミ」と歌ってそのあとアルトで「ドレミ」と演奏する。これを繰り返します。

2)ソプラノと両方用意してソプラノで「ドシラソ」と演奏して続けて(アルトに持ち替えて)「ファミレド」と演奏する。次はこれの逆を。アルトで「ドレミファ」次にソプラノで「ソラシド」これを繰り返します。

3)我田引水になりますが、「地球は笑顔」を練習されるとアルトの「実音」「移調」が2段に併記されていますので、両者を見比べながら「移調」で吹いている音が実際はこの音、という風に少しづつ全体像を理解されることも可能です。ハイブリッド車みたいなもんですね。

 

実音記譜の合奏楽譜が少ない

 確かに今はまだ少ないですね。でも「実音記譜」の良さが広まっていくと必ずや増えてくるものと考えています。

 

だいぶ長くなりました。この記事はここまでです。

 

 

 

 

 



以下は2000年ごろの記事になります。内容が古くなったものもありますので、今後順次更新していきます。

 

3)基準ピッチについて


私たちが楽器の選択をするときに、同じピッチで演奏できるかどうかは、良く鳴るかどうかより も大切なことです。


当然のことですが、ピッチが合わない楽器を持っていては、美しい演奏は望めません。そしてオ カリナは、「焼成」という過程で縮むことなどのために、他の管楽器ほどは、同時期の同一メーカーの同一モデルでもピッチの統一がなされていないと思います。中には「ピッチ管理」という意識が無いのでは?と思えるメーカーのものもあります。


ましてや違うメーカーのもの、同じモデルでも製作時期が大きく異なるもの、同じメーカーでも 違う機種、という条件、あるいは複合条件になると、「合うほうが不思議」とでもいうほど「やってみるまでわからない」状態であると思います。


ピッチを問題にする時には、「基準ピッチ」をどうするかという問題を解決しておかなければい けません。現在基準ピッチの選択肢としては、A=440HzまたはA=442Hz(Hzはヘルツと読みます)の2通りが考えられます。広く認められている国際標準ピッチは、A=440Hzですが今日、一般的なピアノの調律は、A=442Hzでされています。

また、オーケストラの演奏ピッチは、445(ヨンヨンゴ)以上ではないかと良く言われています。


オカリナ同士だけで演奏するならば、「基準ピッチをいくつにしなければ」という制約はありま せんが、伴奏してもらうときには、実用的な、基準ピッチを選択しておかなければいけません。また購入後に調律をするときの基準音がたやすく得られるものでないと厄介です。


私たちは、演奏をピアノで伴奏してもらう可能性がまずありませんので、A=440Hzを基本 にしています。また発足当時、手許にあった楽器の多くが、そのあたりで落ち着いていたということもあります。(個人的にはソロ演奏用楽器とのからみを考えるとちょっと低いかな?とは思っています。)


幸いなことにMidi関係の機材も初期設定は440でされていますので、(ということは、ほ とんどのカラオケCDはA=440Hzのはずです。念のため。)ピッチ合わせの基準に使う機器との親和性が良いようです。


ただしオカリナはその時の温度によって、ピッチが上下しますので、「室温が○○度の時」とい う条件が加わります。普段活動しているのは、普通に冷暖房をしている部屋ですので、20度以下の時は少ないと思います。国際標準に定められている「温度が摂氏20度で」という条件ならば、A=438Hzぐらいではあるかもしれません。私たちの考える「A=440Hz」とは普通に演奏(練習)活動をする条件下で、「A=440Hzの電子キーボードと音域の端から端まで、十分な音量と美しい音色で、完全なユニゾンを演奏できること」です。(私の場合、ソロ演奏用には、高め低め両方の楽器を用意しています。ポテトで使うのは低めのほうに入ります。)


楽器製作関連の方がもしこのページをご覧でしたらば、室温25度(冬なら暖めすぎ、夏なら冷 えすぎ)ぐらいで441~442の調律にしていただくとありがたいです。(もっと具体的には、Midiカラオケとピアノの両方と仲良く出来ること)ついでに言うと、ソプラノとテナーのD管、ソロ用途にはH(B)管が欲しいですね。



 

4)購入後の楽器の調律


購入後の楽器が(私たちの)基準ピッチからずれていたり、音程のバランス(基準ピッチに対す る一音ごとの高低)が、良くない時には、調律を施します。乱暴ですが、セロハンテープだけで済むこともありますし、エポキシ樹脂や、やすり、ドリルのお世話になることもあります。 買ってきたままで使っている楽器の方が少ないはずです。


音程は、腕前や演奏の仕方によっても大きく変化しますので(楽器の上下=水平方向?垂直方 向?の角度で、音程が変化する現象はご存知ですね?。)

「奏者のせいではない」時に限って有効です。 


 

5)支えの工夫


楽器が滑ると上手に吹けないので、さまざまな手段で、滑り止めを施しています。具体例としては、

1)奏法上の支え指を工夫する。

2)滑り止めシートを貼り付ける。(ホームセンターなどで売ってる細かい網目状のもの)

3)滑りやすい塗装の時は、音孔周りの塗装をはがす。これにより皮膚と音孔周辺の密着度が増すこともあります。



 

6)低音楽器について


低音域の不足を補うために、市販されている凖最低音域の(伊)メナーリオ社製OBS-7Cを 使用していましたが、さまざまな試行錯誤の上に、少々の工夫をしました。

1)C管のはずですが、とてもピッチが低いので、B♭管として使います。

   (ここのんには、よーあるこっちゃ!

2)重くて支えるのが大変ですので、トーンホールを造り替えて、右手を逆手になるようにしました。

   (ただし現在はポテトオリジナルの楽器を使用していますので、あまり出番がありません。)


ポテトオリジナルの低音楽器につきましては、いまのところ自分たちの使う分で手一杯ですが、

余裕が出来れば、小さな手でも演奏できる、バスFとバスC、コントラバスGを少し余分に作りたいと思っています。(あんまりあてにしやんといてなー



 

7)結露対策について


寒い時期や、夏でも冷房が効いている時などに は、常に一定の演奏コンディションを保つために、演奏中の楽器の保温と結露対策をしっかりしておかないといけません。

保温の目的は、1)ピッチを保つため、2)結露を起こしにくくするため、の2点です。

保温の方法としては、1本だけなら手や懐で暖めると良いでしょう。私たちは複数の楽器を使用しますので、使い捨てのカイロを重宝しています。

結露は呼気中の水蒸気がウィンドウエイで冷やされて起こります。

結露を起こすとウィンドウエイに水滴が溜まり、気流が乱されて正しく発音しにくくなり、

 1)ボリュームが下がる、2)ピッチが上昇する、3)ノイズが混ざる、4)音色が曇る、

 5)高音部や低音部が発音しなくなる、 などのさまざまな障害をもたらします。

ときどき「この笛最近よく鳴りません」と言われて、見るものの多くがこれにあてはまっています。

結露を防止するには、

1)保温する、2)ウィンドウエイをきれいにしておく、3)結露予防液を使う

などの方法が有ります。 結露予防液とは簡単に言うと眼鏡に塗る石鹸水のようなものです。

界面活性効果のあるものを塗布することにより、水滴をはじいてしまいます。

私たちは眼鏡の曇り止め液を使っています。

(人体には無害ですが食べられませんと書いてあります。!??)

乾燥した清浄なウィンドウエイに少量を流し込み、もう一度乾燥してから演奏します。

(よって楽器を使わないときにしか出来ません。) 1度の処置で大分長い間効いています。

今までずっと結露した状態で演奏していた人には、違う楽器のように思えて違和感を覚えるかもしれませんね。自分の思っている笛のイメージと異なるようでしたら、洗剤で洗ってよくすすいで落とせばよいでしょう。(ただし洗剤にもしばらくは界面活性効果があります。)


 

8)ポテトおすすめの、練習お役立ちグッズ


オカリナを練習する人は次のようなものを使わ れると良いのではないかと思います。


1)譜面台 

気合いを入れる意味からも必需品と思います。ただしあくまでも基本は練習グッズですので、すべて覚えてしまったら必要有りませんね。 譜面台の足はいっぱいに開いて、首は寝かせ気味がきれいですよ。本番でも使うときは聴衆から奏者をよく見てもらえる高さに調節。

2)筆記具 

楽譜に要注意事項や打ち合わせて決めたこと(繰り返し、前奏や間奏などの有無など)を 記録します。記憶よりも記録! (新庄さんファンごめんなさい。)ちなみに昔はB~2Bの鉛筆が相場でした。今なら蛍光ペンが便利かも (コピーに写らないので白い楽譜が再現できる。)

3)メトロノーム 

練習のあらゆる段階で、活用しましょう。 雰囲気は機械式が良いですが、実用面と正確さからは電子式が良いかも。カード型のは持ち運びには便利ですが、音が少し小さいと思います。笛と同じぐらいまで大きな音の出せるものが良いですね。(特にグループでは。)イヤホン出力をラジカセにつなぐという手も有ります。正確なテンポと正確な(美しい)イントネーション(演奏上の音程)で吹ければ一人前です。「機械は味気ない」というセリフは正確に吹ける人にのみ許されるべきでしょう。メトロノームと自分とが合っているかどうかも、慣れないうちは、なかなか分からないものです。 

4)音程の基準となるなんらかの物 

具体的には、小型電子キーボードや電子式チューナー、きちんとした調律笛、持ち運べませんが、正しく調律されたピアノやオルガンなどが候補です。伝統的には音叉(おんさ)などというものも有ります。ただしそれらをいつ、どう利用するかは、独習では少々辛い部分ですね。 そのうちがんばって書いてみます。

5)自分(達)の演奏を録音、再生する装置 

いろいろな段階で自分の演奏を録音して吟味することは、とても良い指導者の役目を果たしてくれます。あまり快適な作業では有りませんが、出来ない所を見つけて改良することこそが練習の目的です。今ならやはりMDでしょうね。 大勢で聞くためには電池式などの小さなスピーカーが良いでしょう。ラジカセ外部入力につないだり、FMトランスミッター(カーステレオ用としても売られています。)も役に立ちます。(MDのヘッドホン出力をFM電波として発信、それをラジカセで受信して、聞きます。)意外なところでは、ビデオ入力つきのテレビにもつなげます。黄、赤、白の内、赤(音声右)、白(音声左)にMDのヘッドホン出力をつなぎましょう。(ステレオミニ⇔ピン端子の接続線が必要です。) また、この録音装置をレッスンのメモとして使うことはあまり良くはないと思います。自分を聞くために使いましょう。

6)(出来れば全身が映せる)鏡 

姿勢のチェックに使います。手鏡では無理っぽいですね。